ALWAYS 三丁目の夕日


久々に絶賛です。これは参った。参りましたよ。劇場中が、全沖が、泣いた!ずるい!


 お話の舞台は昭和33年の東京。ストーリーはよくある「昭和」の風景の話なんだけども、いやあこれが、どのエピソードも150kmの直球でドンドン投げつけられて、もの凄く精緻な、合成とは一瞬思えない美しい特殊撮影と相まって、始めのシーンから泣きっぱなし。


 ドキュメンタリーでは散々見てきた昭和。でもこの映画は平成の世の若者でもよく知っている「昭和」を切り売りして素晴らしいCGとセットで虚構の昭和を作りながらも直球で「豊かさ」「人の営み」「家族」「幸せ」「日本人」ってなんなの?という単純な事を突きつけて、絶妙な音楽で泣かせる。


電気冷蔵庫がやってきて、喜ぶ家族のそばで悲しむ氷売り(ピエール瀧)の表情に、便利さの代償に無くしてしまった沢山のものを重ね合わせる。そうした「昔は良かった」だけで終わらないところも、美しい夕日がいつまでも続くようにと願う期待、希望と若干のほろ苦さに繋がっていて良い。


 しかしもう携帯、テレビ、PC、自動車その他多くのモノに囲まれたこの世界からあの時代へ行く事は難しい。なぜなら「わかっちゃいるけどやめられない」。これが悲しいかな人間なのだ。携帯でどこでも誰とでも話せて、ネットで欲しい情報はすぐに手に入って、好きなものは割と簡単に手に入れる事が出来る今、それが当たり前すぎて、戻る事は出来ない。だけど、どこかあの時代の人に比べると、なにかをしたいという情熱を感じない。それがいいか悪いかは別として、いかにいまがモノ、食、情報で満たされているか、強烈に実感する。


 父母、じいちゃんばあちゃん世代は完璧にマーケティング対象範囲。そしてあの時代を知らない私のような若者でもしみじみと「ああ、いいよね」って思える。いい映画です。


ALWAYS 三丁目の夕日
http://www.always3.jp/index02.html


追記。
 親父にもこれは見て欲しいと思ったけど、観終わったら必ず言うだろうなという台詞がある。
「ゴム飛行機のゴムの撒き方と飛ばし方がおかしい。あれじゃ飛ばない!」
それはまさしく親父もあの時代に少年時代を過ごした一人という証拠に違いない。