TAMA ZOO 3  視点位置の意味 〜見下ろしor見上げ?〜


さて、こちらが同じ目線の展示。バスに乗りたかったのですが、乗れなかったのでこの写真で目の前にライオンがいる姿を想像してみてください。


おそらく上から見たのとは全く違う印象を受ける事でしょう。バスで守られているものの、けんかがはじまってしまったら相当な恐怖を感じるはずです。そうでなくとも大変な迫力でしょう。(さらに面白い事にバスはライオンの捕食対象であるシマウマの模様が描かれています)


このように展示における目線の位置というのは非常に重要なのです。そして多摩では「上から目線」と「同じ目線」同時に体験する事が出来る面白い展示になっているわけです。是非視点の位置でとらえ方がどう違うか体験してみてください。


では、下からだとどうなるでしょうか?見上げる視点の効果としてはAppleのCM「1984」やVフォーベンデッタでも印象的に使われておりましたが、対象物にたいして恐れや尊敬、従属などの印象を受けるようになってます。顕著なのは「ゴジラ」などの怪獣映画で怪獣が初めて登場するところ使われるカットですね。


というわけで次回は下から見上げる展示だと感覚はどうなるか、をブロンクス動物園の展示例からお伝えします。その次は視点の意味すら変える展示をご覧に入れましょう。


追記
このような展示のなかにおける「バス」に対する塗装によってもその動物園の考え方をみる事が出来るかもしれません。


例えば富士サファリパークではこのような塗装がされています。凝ってますね。
http://www.fujisafari.co.jp/map/bus.htm


群馬サファリパークではすべて肉食動物(?)の塗装です。
http://www.safari.co.jp/Guide/About/EsaBus.htm


那須サファリパーク
http://natural.web.infoseek.co.jp/nasusafuari.htm



今度は見下ろしの展示例。ライオンの展示ですが、ここは二通りの見方が楽しめます。


まずは上からの視点です。ライオンの上に橋が架かっていて高さの違うポールが張り出しており、子供も大人も落ちる事なく上から見下ろす事が出来ます。感覚は百獣の王がのんびりとくつろいでいる姿を安全な場所から高みの見物といった趣です。(この展示の欠点はいうまでもなく観客からの落下物が多そうだという事でしょうか?)


上からの視点が印象的な映画というと黒澤明「用心棒」の一シーン。冒頭、主人公の桑畑三十郎が火事櫓からやくざたちのけんかを笑いながら見るというシーンが真っ先に思い出されます。このシーンでは観客も主人公の気分になり、無駄な戦いをするはめになったやくざたちを笑いながら高みの見物するわけです。


多摩のライオンたちはのんびりしたもんですが、もし何らかの拍子にけんかが始まっても上からの見物人は恐れを感じる事無く興味津々、どうなるか見つめている事でしょう。まさに神のような視点ともいえるかもしれません。