去年印象深かったやつ、いくつか。


こういうことはおそらく年末にするんだろうけど、する暇がなかったので今してみます。長いです。


まず本。去年はまあそれはもう結構な量読んでいたような印象があります。特にいままで読んでいなかった定番的なヤツを読み進めた年でしたね。そのなかで良かったもの3つ。

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 立花隆「宇宙からの帰還」
 

これは、名著ですよ。もうね、好きな人には買ってあげてでも読んでもらいたい本です。そもそも宇宙好きならばとっくに読んでいなければいけない本なんですけど、なぜだか出会いが遅れていたんですよ。私、宇宙、もっと細かく言うと宇宙関連の技術本って目に入ればほぼ読んでいるんです。それでも出会いが遅れた原因は装丁の悪さと題名の悪さ。でも、読んでみてほんと驚き。


アポロ、ジェミニ計画で宇宙へ行った飛行士たちにインタビューをしたものなんだけど、質問内容が「で、宇宙ってどうなの?地球みて、なんか変わったこと、ある?」。これ、万人が聞きたいテーマだよね。行ったことある人ほとんどいないんだから。いまだとこのテーマってかなり出るんだけど、当時としては画期的だったみたいで、飛行士たちもこんな質問は初めてだということで楽しそうに語っているのがとてもいい感じ。ほとんどに共通しているのは「神の存在を信じた」「地球ほど奇麗なものはない」。おお!そういうものなの?


これ読んでなんだかね、人間の存在とかさ歴史とか、そういうものって儚すぎなワケで、そんなことよりもさ、もっと大事なことあるなあと。
「環境とは自分以外のすべて」であって、自然環境云々言うよりもね、まわりの人とうまくいかない人にゃそんなレベルの話は出来ないなあと、そんな風に思うのです。


とりあえず読むと視野が宇宙視野に近づきます。そして宇宙に行きたくなる。この本を読んで宇宙飛行士を目指した野口飛行士曰く、「仏教用語で悟りを得るというのがあるけど、おそらくそれは宇宙から地球を見ると得られるものに近いはず」という言葉もビリビリ来るものがある。

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 伊丹十三「おんなたちよ!」


エッセイストでスキなのは親父と友人の影響で東海林さだお&内田百の二強時代が続いていたんだけど、今回伊丹十三の初期エッセイをざらっと読んでこちらもなかなかという印象。軽妙洒脱で粋という使い古されたフレーズがこれ以外ないというくらいはまる。とにかく文章がうまくて絵もうまい。内容が現在でも達成できていないスマートな生活に関するもろもろであって親しみやすく憧れやすい。特にスパゲッティの作り方なんかはとっても楽しい。映画以前の伊丹十三も才能にあふれていたのがちらりと見えるそんなエッセイ。

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 太宰治人間失格


こちら、なかなか読まずに生きて来てしまったことを後悔した一冊。なんだかんだで、これほど心揺さぶられる体験て文学じゃないと出来ないのじゃないかなあ?そのくらい心にバキーンと刺が刺さる感じ。読んでいるとあまりにも自分の暗部を見ている気がして痛いんですよ。現実を突きつけられている感じ。だけどそれでも「一切はすぎてゆきます」=人生は続く=life goes on. なんとも上品で陰湿で突き放したまとめだけど、最高としか言えない作品だったなあ。こちら読んでないならば人生考えたいときにぜひ。

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映画。おそらく人生で一番多く観ている年になったと思う。週1は確実に映画館で観ている。DVDを含めると3倍くらいか。DVDは日本映画ばかり観ていたなあ。その中でここで紹介しそびれたDVDでみた傑作を二つ。


 中本康「月曜日のユカ」


最初にこれかよと思うけど良いものは良い。糸井重里なら「かわいいとは、こういうことさ」とキャッチコピーをつけたであろう。


なんなんだろうね、あの加賀まりこの暴力的な可愛さは。映画的な視点で見るとテクニック、服装、ロケ先などすべてがハイセンスな感覚でまとめられてて、この時代の作品からは臭ってこない、独特のにおいが確かにする。だけど、そんなことよりも加賀まりこなんですよ。コレ見た当時の人ってどう思ったんだろう?しぐさ、性格、スタイル、ほぼ満点。声だけちょっとマイナス。ってくらい、かわいい。もちろん衣装のセンスの良さ、小道具その他のチョイスのセンスなんかもかわいさをドンドン加速させてる。ホテルニューグランドのロビーも山下公園も元町も横浜のいいときが撮られていてさらに好き。


とりあえず、女の子にほんとうのかわいらしさってなあに?って聞かれたら、この映画の加賀まりこのことだよと教えてあげたい。そんな映画です。


え?ほんとかって?わかったわかった。じゃあこれをみてくれ。


http://cineaste.jp/l/1054.jpg


ちなみに左は中尾彬だから。あ、ぶったまげた?というわけでゴチャゴチャいうよりも加賀まりこのかわいさに驚く一本。

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 深作欣二蒲田行進曲


こちらは観ようと思っていてなかなか観れなかった一本。これは大傑作だ。三人の主人公にみんなそれぞれ「そりゃないでしょー」と「しょうがないよなー」があって観客の心をぶんぶん振り回して行く脚本!コレが最強。もとが舞台だけあって、脚本映画です。


分かりやすく力強いラストへの期待の持たせ方。演劇オチを予感させる伏線とその前の泣かせまくるシーン。80年代のダメなタイアップがあるのが難点だけど、それをのぞけば私の中で相当重要な映画。松坂慶子風間杜夫平田満、三人の俳優としての魅力は最強レベルじゃないけど、キャラクターが立ちまくっていてどれも印象に残る。保津峡のシーンが大好き!最後のハッピーエンドもカンペキで、笑わずにはいられない。深作監督、会心の作、だったんだろうね。緒川たまきのかわいさもDVDのおまけとしては出色の出来。これは万人にお勧め。

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音楽。これは薄い一年でした。ほとんど新しい分野を開拓して行かなかった。
そのなかでも新鮮で面白かったのが長渕剛。いやー桜島ライブCDは良かった。人間ここまでやれるんですね。感動。歌謡曲分野からは佐良直美再評価もありました。で一年間で、曲を聞いて泣いたのは一曲。


 矢野顕子 YUKI「ごはんができたよ」


ここに書いたことほとんどないけど矢野顕子がそりゃあもう大好きな私。一番新しいアルバム「はじめてのやのあきこ」はセルフカバーで、1曲ずつにゲストが参加。この「ごはんができたよ」はYUKIが参加しているんだけど、泣けるねー。そもそもこの「ごはんができたよ」、反則なほどいい歌詞なんですよ。ごはんができた時間帯の家族の暖かさをビシバシ感じつつ、世の無情=夜の平等や、「つらいことがあったら帰っておいで」という安心、あったかさを内包するこの曲にYUKIのなんとも甘ったるい声がジャストフィット!アレンジも飛び跳ねていて、去年一番の一曲指定。


ふぅ。こんな感じです。


amazonにて
宇宙からの帰還
http://www.amazon.co.jp/宇宙からの帰還-立花-隆/dp/4122012325/sr=8-3/qid=1168028389/ref=sr_1_3/250-6810015-2909017?ie=UTF8&s=books
女たちよ!
http://www.amazon.co.jp/女たちよ-伊丹-十三/dp/410116732X/sr=8-3/qid=1168028439/ref=sr_1_3/250-6810015-2909017?ie=UTF8&s=books
人間失格
http://www.amazon.co.jp/人間失格-太宰-治/dp/4101006059/sr=1-3/qid=1168028478/ref=sr_1_3/250-6810015-2909017?ie=UTF8&s=books
月曜日のユカ
http://www.amazon.co.jp/月曜日のユカ-斎藤耕一/dp/B00006YXRX/sr=1-1/qid=1168028530/ref=sr_1_1/250-6810015-2909017?ie=UTF8&s=dvd
蒲田行進曲
http://www.amazon.co.jp/蒲田行進曲-松坂慶子/dp/B000K4WTFU/sr=8-2/qid=1168028549/ref=sr_1_2/250-6810015-2909017?ie=UTF8&s=dvd
はじめてのやのあきこ
http://www.amazon.co.jp/はじめてのやのあきこ-矢野顕子/dp/B000CR5DSA/sr=8-1/qid=1168028572/ref=sr_1_1/250-6810015-2909017?ie=UTF8&s=music