音楽部門
毎年やっている今年一番ドギュンと来たヤツを紹介する振り返り企画。まずは音楽部門。
今年一番ドキュンときたのはチャットモンチーです。デビューから2年でもう十分大きくなったと思いますが、こりゃいいですよ。たまたま今日NHKでライブをやっていてその感を強めました。
好きな点は2点。
1.地方(徳島)から東京に出てきて新生活を始めた、我が強くて周りからはちょっと変わった存在と思われている女子+社会に出たくないけど出ざるを得なくて嫌々だけど出ている現在22歳前後の女子というほぼ彼女達そのものの設定で繰り広げられる世界観。←これでたぶん相当合っている
2.明らかにキチンとうまい演奏。
この2点です。特に前者はここ最近ではピカイチというくらい等身大な女子を歌っていると思う。そう感じるのは彼女らが自分とほぼ同い年という事もある。
その感覚は1stアルバムの「女子たちに明日はない」や「真夜中遊園地」から強く伝わってくる。曲の題名からいきなり、女子たちに(おそらく妄想に生きていた自分たちに)明日はないという。
【コンタクト外して参加した現実】
【写真が好きな景色たちはポーズして 思い出より美しい思い出のふりで着飾るの】
という超後ろ向き女子の歌詞からは社会で生きるのは辛いという現実を歌っていて、だけど心の中では【何が真実なのだろう】と自問を続けるという、いかにも今の25歳女子を表していてうまいなあと。
またここ10年で最も多くの生活や人付き合いの変化を生んだ「ケータイ」の歌詞の中での使い方などもとても現実的。おそらくいままでのこうした音楽の中で最もケータイに対する感情がストレートに歌詞に出ているのがこのバンドの歌じゃあないでしょうか。
一例を挙げれば『シャングリラ』『モバイルワールド』での
【携帯電話を川に落としたよ 笹舟のように流れてったよ あぁあ】
【あぁあ 気がつけばあんなちっぽけな物でつながってたんだ あぁあ 手ぶらになって歩いてみりゃ 楽かもしんないな】
というケータイが無くなってしまったらそれはそれでいいと肯定する感覚と対比して
【笑った顔文字の奥 わたしの心100グラム】
【こいつが鳴ればすぐに幸せ まぶしい光 小さな世界】
というやっぱりケータイを手放せない悲しさ、弱さにググッと来てしまう。やっぱそういうもんだよね。これはもうケータイが生活の中心に中学生のころからあった世代ならではのきちんと自分の感情を表現した歌詞。
その一方で長距離バスで来る彼氏、帰ってしまう彼氏を女子の心境からバスの色(ピンクと灰色)で表現した『バスロマンス』のようにとても可愛らしく切ない曲も書けてしまう。これも大げさな愛を歌う曲には無い、女子の幸せな恋愛の現実的な空気感が出ている。
こうした、ともすれば敬遠されがちなネクラ女子的歌詞世界感を持ちながらも聴いていて気持ちよいのは、ほぼアップテンポだけで構成される楽曲の構成とかっこいい演奏が心地よいからに他ならない。
さらに言えば今年出たシングル『風吹けば恋』からは大貫妙子『会いたい気持ち』の世界観と同じく、【はっきり言ってお伽話は罠 期待したってかぼちゃはかぼちゃ】とネクラな自分に未練を残しつつも、【走り出した足が止まらない 行け! 行け! あの人の隣まで】とぐいぐいと違う積極的な女子に加速していくそぶりを見せている。このように彼女たちの世界も変化しつつあるところが面白い!
というわけで、これからも自分が年を取るように時代と共に成長していってほしい存在。やっぱ、これ、いいですわ。