父よ


私の父が長年勤めた精密機器会社を11月30日、定年退職した。


 近頃父は「ゴミを作り続けた、デザインは虚業だ」と自分のしてきたことを冗談めかしてかなり否定するようになってきた。確かにそう考える時もあるが、工業製品は多くの人がそれに触れて、どんな形であれ、その人の記憶に残る。人とは記憶で出来ている。誰かの記憶の一部に父の作ったものが生き続けるのなら、記憶に深く絡む「カメラ」のデザインは、なかなか幸せな仕事じゃないか。


 38年間、おつかれさま。そしてありがとう。これからは好きなことをしていって欲しいものだ。酒はほどほどに。


 昔から父に似ていると言われて、そうかな?と思ってきたが、最近ではそれも嬉しい。


キヤノンカメラミュージアム デザイン館 <先駆の肖像>「1014XL-S」
http://web.canon.jp/Camera-muse/design/pioneers/1014xl/index.html
左の写真は514XL。昔の方がカッコいいのは言わずもがな。