コルドバのメスキータ
スペインの多くの宗教建築にいえることはイスラム様式とキリスト様式が混ざり合っていて、他のどこにもない建築が残っているという点。そもそもスペインはその国土の大半をイスラム教徒に支配され、長い年月をかけてレコンキスタ(再征服)した土地。一番有名なアルハンブラ宮殿は最後までイスラムが頑張った土地です。レコンキスタは718年から1492年(コロンブスがアメリカ行った年)まで続き、欧州の中でも特異な歴史を有しています。
コルドバも例外ではなく、一時は西のイスラム世界の中心として栄えていました。コルドバにあるメスキータとはモスクの意味であり、イスラム教のモスクとして使われていた寺院をキリスト教会用に改造したもの。日本でいうと老舗旅館が外資に乗っ取られて和風建築の上にビルディング建てたような感じ、ではないな・・・長崎の礼拝堂みたいに寺を改造して教会にした感じですね。でも寺の要素がまだまだ沢山残っていて面白いという。
そう、なので建築としてはハーフ、合いの子なのです。人間でも加藤ローサ、木村カエラ、滝川クリステルなどハーフのほうが可愛くなる確率は上がる気がしますのでこのメスキータもハーフの宿命で美しい建築になっているんだろうなあ、と思っていましたが、イスラム建築の美しさがはるかに優っていて、その中にねじ込まれているキリスト建築は装飾過多で田舎っぽい、不釣合いという印象を受けました。キリスト礼拝堂の完成時、皇帝もキリスト建築をねじ込んだ時にはだいぶダサいと思ったらしく、「なんでこんなにひどくしたのよ」と怒ったそうです。
このコルドバの街を代表するようなタワーはモスクのミナレット(尖塔)として建てられ、キリスト教徒により鐘がつけられ、トーレ(鐘楼、イタリア語だとカンパニーレ)にされたそうです。これは面白いですよね。うまく転用できた!って誇っていいと思います。
ここはオレンジのパティオ。礼拝者が体を清めるための沐浴を行う清めの「庭」。完全にイスラーム。
もちろん今でもオレンジの木があります。大昔は月桂樹の木だったそうです。
中に入って来ました。馬蹄型の梁が美しい礼拝の間。
こちらがだいぶあとに建てられるピサの大聖堂に大きな影響を与えているのはよくわかります。そういう意味ではピサの方がイスラームとキリストがうまく融合しているのかもしれません。
ここなんかはキリストとイスラームの交差地点だと思うのですが。
もう少し進むとメッカの方向を示すミーラブが出てきます。
この方向にメッカのあの黒い四角いのがあると示してくれる存在。しっかりと今もここにあります。
偶像崇拝のないイスラームですので、これが最高に聖なる存在なのだと思います。
もう少し進むとデーンと現れるキリスト教の礼拝堂。超違和感、感じません?
梁などは再利用しているのですが、それが却って安っぽく見えてしまい、サイゼリアのようです。
このようにキリストもいらっしゃいますが、居心地がいいとは思えません。
イスラームの建築部分の美しさが鮮烈に印象に残っています。
融け合わない限り、何事もくっつければ良い、というものではない気がしました。
さて、街に戻ります。街のタクシーはVWだったりシトロエンだったり、テキトーです。
コルドバ2016というのは2016年欧州文化首都に立候補しているためだそうです。一年ごとに変わる文化首都という制度があるのですね。
コルドバも文化遺産と生活が隣り合わせで未だに共存しているところでした。
メスキータの近くこそおみやげ屋さんや宿屋などの観光エリアですが、少し歩くとすぐに庶民的な小道に入ります。
自動車がほとんど入ってこられないような小路が多いので歩くのも楽しいところです。
夏の光に映えるブーゲンビリアです。南国ではないんですが、間違いなく南に来たなあと感じます。
そもそもコルドバとはコードバンから来た地名であり、皮産業が盛ん。
ここでいうコードバンは財布などで使われる光沢のあるコードバンとは別物で山羊革のことだそうです。
このおじさん、写真を撮っていいですかと尋ねたら無言で頷いて奥から箱を持ってきておもむろにこんなポージングしてくれました。