鉄道博物館考(1)交通博物館からどう変わったのか


今回から5月に訪れた鉄道博物館で感じたことを書いておこうと思います。


鉄道博物館秋葉原にあった交通博物館をある程度引き継ぐ形で大宮近くにオープンした博物館です。
私個人秋葉原交通博物館は何度行ったか分からないほど行っておりまして、ちょうど閉館日に今勤めている会社の最終面接があり、閉館を友人と共に見届けた後、面接に行ったほど不思議な縁もあります。しかも今回鉄道博物館を訪れた日が5月14日で交通博物館の閉館日と重なっていたのです。また名称が『鉄道』だけになっているように以前あった船、飛行機、バスなどの『交通』部分の展示がどうなったのか、日本の鉄道全般というよりもJR東日本の博物館というイメージもあり、気になっておりました。


交通博物館の持っていた魅力

交通博物館の魅力とは場末の雰囲気感、コレに尽きるでしょう。平日に行っても休日に行ってもそれほど人はおらず、いわゆる学芸員というものの存在を感じることが全くない博物館だったと思います。展示も殆ど変化せず、今のように鉄という名称でちやほやされる前の鉄道趣味のうらぶれた感じがちょうどよく、それでも台車の運転装置などは本物の迫力があり、ドアの開閉、新幹線の行き先表示板など自由に好き勝ってやれるところが面白く気に入っていました。3階建て吹き抜けの開放感や2階、3階と上がって行くに従って展示の気合いが下がっていくのも好きでした。


また鉄道模型ジオラマは係の人のアナウンスで運転され、時間の変化も照明で行い、夕暮れの時間にムーディな音楽と共にブルートレインが出発していくところなどは今思い出してもいい感じでしたね。


鉄道博物館の特徴

鉄道博物館にはそういうダークな部分、うらぶれた感じは当然ですけど全くありません。建物も広く開放的で、ライティングも凝っていて、内装も現代のレベルになっています。そこはこれだけ鉄道趣味が日の目を当たるようになった今、当然と思いますし、よかったと思います。そりゃ入館料が310円から1000円と約3倍になったので、そのくらいして貰わねばという気もします。


最大の特徴は展示されている鉄道の車両の大幅な増加。コレに尽きると思います。特に大正以降の車両については散らばっていた貴重な車両を受領して一堂に見られるようになっているのは大変迫力があっていいと思います。7、9、10、12御料車の展示など今まで見たくても見られなかった車両がどーんと展示、これは一番の魅力でしょう。そんな鉄道博物館の魅力と問題点について書いていこうと思います。


では、とりあえず行ってみましょう。





鉄道博物館までの道のりは果てしない(そのくらい遠く感じる)。その旅の始まりは上野駅上野駅15番ホームには石川啄木の歌碑が。

 
    ふるさとの訛なつかし
    停車場の人ごみの中に
     そを聴きにゆく



大宮駅よりニューシャトルというゴムタイヤの新都市交通に乗り換え、鉄道博物館駅へ。
駅前からは頭上にダイヤグラム、足下に時刻表という歩道で鉄道気分を盛り上げてくれます。
点字ブロックをデザインの一部として取り入れている点もとてもいい。



入り口前には交通博物館の入り口脇にあったD51が置かれています。
この脇には車輪の歴史や台車などが置かれています。



入り口、ゲート。ここでは駅の改札を少し模した作りになっております。
こうしたエンターテインメント性の高い博物館の場合、ゲートは期待感を高めるために、それっぽいモノにした方がいいと考えているのですが、ここのはちょっと中途半端。入場にSuicaを利用させるのはいいと思いますが、その役割が博物館的ではなく商業的で、このゲートから『改札』というシステムの博物館的な展示の一部とした方がよかったと思います。最近は自動改札機に切符を入れることも少なくなってきましたけど、スケルトン自動改札機で切符が中を通り抜ける様を見せるとか、逆に昔の改札を模して切符に鋏を入れて貰うとか一工夫欲しかったところ。



1930年当時の桃山様式に復元作業がされた展望車マイテ39。
こちらのページで大変詳しい解説がされておりますのでぜひ。
http://uenojp.web.fc2.com/maite39-1.htm





ズダボロになっていた車内装は現代の技術で復元されており、当時の雰囲気が味わえます。


展望車展示では、なぜ有名な「つばめ」でなく「富士」なのか一瞬疑問でしたが、富士の終点下関から航路・鉄道と連絡し、朝鮮・満州・中国、シベリア鉄道を経由してパリ(フランス)・ロンドン(イギリス)に至るまでの国際連絡運輸が行われていたことを紹介したいのだと思います。



壱岐丸の号鐘。打たせてくれればいいのにね〜。もしくは音だけでもスピーカーで流して欲しいね。




一時代を築いた竣工模型のトップ・ブランド、籾山船舶模型製作所の金剛丸の模型。
籾山模型について詳しくはこちらへ
http://www.jasnaoe.or.jp/zousen-siryoukan/2012/120307-momiyamamokei/iinuma-01.html



大連−ベルリンの切符


上記のように富士の関係展示として日本発ヨーロッパ行きの切符や関釜連絡線壱岐丸の合鐘(交通博物館にあった)、同じく関釜連絡線金剛丸の模型(これもあった!)が展示されてて、日本からヨーロッパに鉄道と船を駆使して行っていた時代についてここは結構上手くまとまっていると思いました。