日本科学未来館の凋落


東京お台場にある日本科学未来館
開館したのは2001年。それまで国立科学博物館の古ぼけた展示しか知らなかった私にとって、ここの展示は非常に先進的かつ量が多く、ボランティアやインタプリターの配置数、雰囲気も素晴らしく、新時代の科学館が出来たな、と喜んでいました。その気分は開館から6年経った2007年に書いたこの記事からも伝わって来ます。
http://d.hatena.ne.jp/p0lar-star/20070722


それから約10年。企画展を主目的に久しぶりに行って来た日本科学未来館は17年前の輝きを失ってしまっていました。



今回の企画展はダンゴムシやペンギンなどの生き物になりきれるというコンセプト。



ま〜、これの出来が悪い。それぞれの生き物の特徴はポスターで書いてあるのみで、大勢配置されている係員は案内のみ行うだけ。どうしてその動物がその動きをするのか、これからどういう動きをすればなりきれるのか、何の説明もない。



これじゃ何の学習要素もないテーマパークの劣化版になってしまってて、大人が1900円を払う価値はない。アイデアはとても面白いし、やるのは楽しいから、やり方次第でもっと良くなると思うんだけど、今は学園祭の出し物レベルを脱しきれてなかった。




とは言っても企画展は企画展。正直企画展でよかったなと思えるものって今まであんまりなかったので、それほど悲観せずに常設展へ。


そしたら日本の科学技術衰退と同じ雰囲気を感じるくらい酷くなっていたので、本当に悲しい気分になってしまいました。





ここの特徴は2007年に書いてある通り「「展示」だけでは伝えられる情報は少なく、文字を多用すると視覚に入らない展示ばかりになってださくなっちゃうから、逆に人で補うという発想。」があったからこそ輝いていた。それが言葉の氾濫と全く解説してくれないインタープリター、ボランティアの方々になってしまっていて展示品質がガタ落ち。そもそも展示の量が少なく、新しい展示もメディアアートのような伝わりづらい、中身がない「スカ」のものが多くなってしまいました。きちんとした科学展示はカミオカンデの光電管展示などで、目新しいものはほとんどなかったです。




それぞれの展示の見た目は今っぽく、輝いているように見えるのですが、メッキ。

例えばツイッターのタイムラインからHAPPYBIRTHDAYを地球儀に表示させる展示があったのですが、リアルタイムじゃなくてだいぶ前のある日のデータ。これじゃ当日たまたま誕生日だった人が展示を見て、盛り上がれることもなく、何を伝えたいのか全くわからない。

綺麗に作ったものを自由に見てね、というだけで、何かを伝えたい、という欲望が見えてこない。


考えてみればスーパーカミオカンデ、海底探索船ちきゅう、すばる望遠鏡H2Aロケットなど、日本が世界に誇る科学界の大スターってほとんどが20年くらい前のもの。実は最近のものがない、という事実に絶望的な気分になるというか。もちろんIPS細胞など大スターはいますが、こと展示映えする題材に限っていうと、未だ飛ぶ気がしないMRJくらいでまだ展示出来るところまでは行っていません。





そう考えると「最先端の科学をわかりやすく展示する科学館」が埋没していくのも無理はない気がしています。
大スターの登場を願うとともに、今となってはだいぶ昔のロボットに感じるASIMOを最新のロボット展示としてやり続けている意味をもう一度考え直す時期に来ていると思いました。