トヨタ・センチュリーレビュー3 内装と走行性能


以前の記事はこちら
http://d.hatena.ne.jp/p0lar-star/20140708/p1
http://d.hatena.ne.jp/p0lar-star/20140709/p1


では内装を見ていこう。

1枚の製材から切り出した木目パネルが各所に配置され継ぎ目も木目が繋がるように切り出されている。それにメタルの空気吹き出し口が配置されている。非常に保守。超保守。悪くいうと古くさいデザイン。昭和の旅館のような佇まいすら感じる。およそ2014年現在も売り続けている車とは思えない。





そしてボタン類。電装品が多くボタンも多いのだけど、そのボタンの多くになんと漢字での説明が表記されている。凄い。こんな内装の車は世界中探してもない。


ちなみに現在の最高級車種レクサスLS600hは後席スライド、リクライニング、マッサージ機能など、センチュリーとかぶる機能が多くあり、事実上の後継車ともいえるが、ボタン類はこのような絵や英語で表記されており、

ますますセンチュリーの特異性が上がる気がする。




シートは柔らかく適度なCushionがあるもので、座り心地はとても良く、後席はスライド、リクライニング、ヘッドレスト上下前後、アンバーサポート、シートクーラー、マッサージ(バイブレーションのみ。もみ玉が動くLS600hはこれの正統な進化といえる)などおよそ考えられる全ての快適機能が詰め込まれている。

この写真でも分かるとおり、ドアとフロアの位置をフラット化して出来るだけ降りやすく設計されている。



中でも気に入ったのは助手席の背もたれ部分が手前に開き、ここに足を入れることでフットレストになること。見た目はおおよそ上品とはいえないため、LS600hでは後席の下からフットレストがせり上がり、助手席は出来るだけ前に動く仕組みに変わったが、この助手席貫通フットレスト、やると最高に気持ちいい。これだけ助手席をないがしろにする車もないだろう。これだけのためにこの車が欲しくなる瞬間だった。



また後部ドアは半ドアから自動で閉まるオートクローズ機能が付いており、ドア閉めまでがジェントルに行えるようになっている。この機能は主にドアマンがどの程度の強さでドアを閉めれば最も良いか判断に困るためとのことである。ドアノブの不思議な形状にも注目して欲しい。



続いて助手席だが、カタログによれば秘書席となっており、後席の偉い人と会話するために振り返った際に掴みやすいよう、最適な位置にグリップが付いていることが特徴である。オプションで車載FAXが置けるようになっている。助手席の位置づけを秘書用と割り切る、その潔さと特異性が面白い。
なお助手席のヘッドレストは手動で倒れるが、LS600hでは自動になっていた。



初代の助手席と比べると共通点がたくさんあることに気がつく。


最後はこの記事にたどり着いた方々の中で一番興味があると思われる走行性能について。




エンジンは国内唯一の5L V12。万一エンジンに問題が生じたときのために片方のV6だけでも走行できるようになっており、フューエルポンプなども2系統それぞれ用意するなど冗長性を持っている。


エンジンの特性はV12を静寂と安定したトルクに配分した特徴的なものとなっている。とにかく振動が少なく、アイドリング状態ではエンジンのセルスタート音以外はエンジンがかかっているのか分からない。


なお通常モードでは立ち上がりにはV6のみを使用し、ジェントルに発進することを信条にしているが、パワーモードを選択することによりV12の全てを使用することが出来る。このパワーモードがあることでドライバーズカーにもなるのだ。サーキットでの走行などは是非トップギアでプアマンズV12として試験して貰いたいものだ。



高速道路での巡航性能はどこまでも走っていられるように感じるほど滑らかであり、公道の速度制限が低い日本専用車だからこそ出来るであろうサスペンションの優しさを感じられる。震えが全く伝わってこないため、疲労感というものが普通の車を運転したときとはだいぶ違う。また欧州の高級車など運転そのものを楽しむ方向の車ともまた違うこの車独自の世界を築いている。


ただ、問題点が無いわけではない。写真がないので申し訳ないが、運転席のメーター類がデジタル表示の車速と燃料系だけで簡素すぎることは何とかして欲しい点だろう。とにかくどのくらいの回転数でいるのか分からないのは心配。まあ心配しなくてもいいのだろうけど。


さらに一番の問題点は停まるときのブレーキ操作が針の穴を通すように繊細なこと。これは今回の個体だけの問題かもしれないが、普通のブレーキ操作だと停まる直前でサスペンションからの揺れ戻りが殊の外大きく、最後結構揺れを感じる。そのため揺れをいなすようなブレーキ操作を行わなければいけない。慣れれば良いかもしれないが、かなり高度なテクニックだと思う。これをどう感じているのか、センチュリードライバーに聞いてみたい点である。またステアリングの遊びが大きすぎるのも改善して欲しいポイントである。



音響関係ではさすがに1997年当時の最新も2014年ではすでにオールドスタイルとなっている。テレビこそ地デジ対応にマイナーチェンジされたようだが、未だにテーププレイヤーが標準装備だったり、DVDカーナビだったりする古さ、というのはもはやこの車のキャラクターになっているので(主な購入者層が未だにテープを使っているためという話も聞いた)、いいのかもしれない。なおFMチューナーの速度の速さは非常に良かった。


燃費は東京-名古屋を下道も100kmほど使い、割とパワーモードも多用して往復7.14km/LとV12が載っている車としては驚異的な高燃費だった。同じV12のMercedesS600は立場も違うが約3km/Lといわれているそうで、この点だけでもセンチュリーの優秀さが伝わってくる。そして単純にV12を搭載している乗用車で考えれば現在世界一安く、お買い得ともいえる。もちろん2nd handで考えればその点は更に高まる。おそらくこの車の特異な中古需要と供給の関係からか中古価格は非常に安いが、こうした車は乗り継いでいくことが重要ではないだろうか。


新車購入の場合、普通にトヨペット店などに行けば購入出来る。ただ話によると現在はレクサスへの移行が進んでおり、新車購入としては霊柩車としての需要が一番多いらしい。人生最後に乗る車がセンチュリーという場合もあるようだ。



それはさておき、この昭和然とした車が未だに売っていること自体が貴重で、実に興味深く面白い車だった。燃費が予想以上に良いので一般的な利用も可能でショーファードリブンという意識でこの車を捉えるのは考え直しても良い時期に来ている気がする。少なくともマイナーチェンジ後の現行車でなければ恐らくその意識は薄れて、個人で楽しむための車にもなり得ると実感した。


次回以降はトヨタ歴史紀行をお送りします。