感動のトヨタ産業技術記念館 繊維編


トヨタ産業技術記念館(旧称トヨタテクノミュージアム産業技術記念館)は名古屋駅北の旧豊田紡織本社工場があったトヨタグループ発祥の地に作られた企業博物館。



豊田佐吉像 奥さん製作)
この企業博物館大きく分けて2つの分野に分かれている。それは当然トヨタのルーツである繊維と自動車。
断言してもいいが、この二つの分野に関してここまで体系的に生産技術史をまとめてみられる博物館は世界のどこに行ってもないだろうし展示のレベルも非常に高かった。なにより展示物の多くが稼働し、実演してくれる。その迫力たるや半端ない。正直言ってこの部門に限っていえば完成品と模型で構成されているドイツ工業博物館など目ではない気がする。そのくらい素晴らしかった。



そもそも生産技術史に関して博物館の展示になることはほとんどないだろう。普通、工業博物館であれば基本的には完成品が歴史順に並べられていくことはあっても生産方法の発達については失われてる機械が多く、大きさ的にも展示が難しいモノが多いからそういうものの実物展示はない。


その点ここは繊維だったら手で普通にくるくる回して紡いでいたところから現在使われている最新鋭の何をしているのか分からないくらいラインが長い紡績機まで全部展示してある。ヤバイ。


織機はもちろん豊田佐吉の発明した初期の織機から自動織機G型など豊田自動織機の屋台骨となった動力織機からエアー式やウォーター式などワケの分からない速さで織っていく最新の自動織機まで全部展示してある。ショック!しかもトヨタの礎となったG型織機については単体だけで無く、当時の工場内での織機運転の雰囲気を実感して貰おうということで同一動力から何台も同時に稼働させてくれる。ちょっと狂ってる。もちろん、この時代の動力織機の展示を行っている産業博物館はアメリカにもある(イギリスにもマンチェスターとかにあるんじゃないかなあ)。↓これ。こんな感じで稼働してくれる。

けれど、ここが凄いのはこの時代を含めて最新の織機まで全部展示して動かしてくれているところだろう。特に最新のウォータージェット織機などはなにしているのが全然分からない速さになっており、技術の進歩に関して非常に分かりやすく実感することが出来る。


ちょい前の精紡機。




ほぼ現役の紡績機ライン。ラインが長いのは出来るだけ均一に糸を紡ぐため。こんだけ長くないと普段使ってる糸を紡ぐことは出来ない。もちろんそういうモノって多いんだけど、実際に観ると感動する。



最新の紡績機。
自動化されて工程も減らされ人もほとんど必要ない。技術進歩実感!



G型。大きな特徴は自動でシャットルを交換し、不良が出たら止まる仕組みになっているところ。
動力織機の名門英国プラット社に特許販売し、その後のトヨタ繁栄の礎となる記念碑的な機械。ただ、動力織機の技術は既に確立されていたため、動力織機の歴史のWiki欄には豊田のことは載っていなかった。
自動化されている部分が画期的だったのと、やはり日本のような当時人件費も安い国で大量に品質良く安く作られてしまうことに脅威を感じたような気もする。




最新の織機。エアジェット方式で超速で織られていく。
衣食住の衣。世界中の誰もが意識せずにこの技術の恩恵を受けていることを感じる。


自動車の方も凄い。国内で初めて導入された600tプレス機が実際に稼働する状態で展示されている。プレス機の展示している博物館他にあるか?ないでしょ?!稼働させておくだけでもいくらかかるか分からないくらいばかでかい代物。それを必要だからと稼働させ続けるトヨタの生産技術史に対する思い入れに本当に感動したし、尊敬した。その他ワイパーの進化やヘッドランプ、バッテリーやシートなど車に関する構成部品の歴史もきちんと体系づけて展示してある。車の試験場やデザインメソッドなど車を取り巻く環境についても歴史を見せてくれる。



このきちんと展示くれている感覚。正直車両の展示ばかりでほとんど鉄道を取り巻く歴史の体系的展示が無いJR東日本鉄道博物館も少し見習って欲しいと痛切に感じた。


そんなわけでこの博物館、名古屋いったらマストで見ないといけないと思います。トヨタに対する考えもこの博物館の展示を見て大きく変わったし、自動織機の技術があったから自動車にも応用できた、というのが良く分かります。