つくばセンタービルから巡る近代建築の路

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つくばに初めて行くのでなにか見るものは無いかと思っていたら、駅前に超有名建築のつくばセンタービルがあるのを思い出した。

つくばセンタービル(1983)は磯崎新の代表作であり、ポストモダンという建築言語の象徴ともいうべき建築。ポストモダンという言葉は便利な言葉ではあるけれど、曖昧で、包括的。その象徴がなぜつくばセンタービルなのか。

 

 

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ということでつくばでの会議のついでに観にいってきた。

行って思ったのは、これが平成時代に乱立する建築の親玉だった、ということ。この建物以前にこんな建物は無かったと思えばこそ、この建物がもてはやされる理由が分かる。

数多くの西洋建築からの引用は必然性が分からない。例えば同時期のアニメ、トップをねらえ!的なパロディやオマージュとは違う。またHIPHOPのようなサンプリング、マッシュアップ的な手法とも違う。割と何考えているのか分からない不気味な引用である。ただ、過剰な装飾性、物語性などの表現をなんとか建築でやろうとしていたのは伝わって来る。

これ、なんかに似ているなと思ったら使わない機能がてんこ盛りの初心者向けと書いてあったNECや日立のパソコンだ!あの頃のあの感じがこのビル。

それに比べるとこのあとでてくる谷口吉生はまあiPadみたいな感じだ。

 

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磯崎新さんは建築家の中では過剰に語る方で、建築論的な本も数多く出している。ただ、このビルを見ると難解な事をいって、出来たモノの出来映えや評価を煙に巻いているんじゃ無いかと思う。磯達雄さんはそれを肯定的に道化師性といったが、まさしくその言葉がしっくりくる。

 

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ただ残念ながら建物に興味の無い多くの人はこの建物をそんなに愛してはいないんじゃない?というのが何となく広場のゴミの散らかり方や看板の文字のチョイスなんかからも窺い知れる。

 

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とはいえ、親玉であるということはオリジナルである。あの平成のヘンな建物たちに違和感を感じている人こそ程、見ておいた方が良いなと思う。

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さてさて、気分を変えて、この建物から南の方に歩いて行くと有名建築家の建物がぽつりぽつりと建っています。さすがつくば。

 

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まず一つ目は久米設計のライトオンつくば。上半分がテラコッタの日よけ、下半分がレンガで覆われている近代的で割と好感の持てるビルです。

f:id:p0lar-star:20191126122740j:plainこちらはめっちゃ新しく2006年竣工。ライトオンって確かにレンガのイメージありますから、バッチリです。ただ、ライトオン社はつくばがあまりにも東京から遠かったためかこの自社ビルからショップ共々撤退してしまいました。今は違う会社が入っています。なんとなく、つくば駅前、マジ寂しい状況です。やはり車社会だからか。

 

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さて、その先にあるのが、あの伊東豊雄の駐車場!伊東豊雄が駐車場作っていたというのも驚きですけど、言われてみると結構特徴がある駐車場です。私も写真を割合とまじめに撮っていてこれもかなり好ましい建築です。こちらは1994年竣工です。車のスロープが外側に出ているところが機能的。

 

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その先に私の大好きな谷口吉生つくばカピオというアリーナ兼ホールがあります。

谷口吉生は作家性が強く、見れば谷口だと分かる建築が多いと、かねてから思ってて、それがまた大好きなところでもあるんだけど、このつくばカピオも、笑っちゃうほどめっちゃ谷口でした。

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ちょっと見て下さい。

「谷口吉生 丸亀」の画像検索結果

丸亀美術館

「谷口吉生 京都」の画像検索結果

京都国立博物館・平成知新館

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法隆寺宝物館

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ニューヨーク近代美術館新館

「日産グローバル」の画像検索結果

日産グローバル本社

 

これ全部谷口吉生。これは誰でも分かりますよね。直角に横面も覆う深いひさしと縦の柱使いまくり。これだけです。いくら何でも同じネタで連続しすぎ?いえいえいこれだけなんですけど、さっぱりしてて、めっちゃいいんですよ。上でも書きましたけど、同じデザインの仕方をいろんな製品で使い回すApple的な良さがあります。

f:id:p0lar-star:20191126123329j:plain同じネタだけに細かいところまで抜かりなく丁寧に仕事しているのでどこ見てもきれい。

 

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人柄的にも建築についてほとんど語らないというのが潔くて好きだし、寡作なのも他の有名建築家がさいとうたかお的なプロダクション方式で量産しているのに比べて作家性が出やすく、きっちり作品をコントロールしている気がしていい。

 

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正直今生きてる建築家の中で誰が一番好きかって聞かれたら谷口吉生ですよ。スティーブジョブスもすげえ好きそう。

 

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というわけで磯崎新伊東豊雄からの谷口吉生だともう圧倒的に谷口吉生が良かった。ブレ無い良さ、安定の美しさみたいな状況で、他の建築と比較して見られるのがつくばの面白いところ。

 

f:id:p0lar-star:20191126180823j:plainさて、その先に私の目的地だったつくば国際会議場があります。ここは坂倉準三の事務所がやってます。坂倉準三は1970年頃になくなっているので、作者死後も続くサザエさんドラえもんクレヨンしんちゃん方式ですが、外側は地味で中は割と派手って感じでそんなに悪くないです。

 

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めっちゃいい!って建築ではないんですけど、ちょうど良い感じです。

 

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コルビジェのLC2が置いてあるのはバブルっぽかったですが。

 

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このエスカレーターワークが特徴的。

 

私は今回ここまででしたが、そのままずーっといくとつくば中央公園があり、そこにあるレストハウスは本家の坂倉準三。松見公園のタワーは菊竹請訓です。さらに会議場のすぐ近くにはつくば市立竹園西小学校があり、ここは京都駅ビル梅田スカイビル原広司を投入ということで、まあとにかく新しく作った都市だけに有名度の高い建築家の作品がたーくさんあります。

 

ちょっと歩いて回るだけで著名な建築家の色々な作品をここまで見られる環境はなかなかないので、秋葉原から1210円払ってつくばエクスプレスに45分乗って行くのもアリだと思います。