NHKスペシャル 沸騰都市


全8回で描かれた、世界の都市たち。
都市の歴史の紹介を極力排除し、すべてを現在の姿とした視点は現在世間で流行している環境や安らぎというキーワードに対して真っ向から反発し、人間の欲望を描き出すのに成功している。


すべてに世界一を目指す、虚像のドバイ
再び世界の中心になろうと積極的な移民を受け入れるロンドン
マイクロクレジット活用により世界最貧困国からの脱却を目指すダッカ
西洋と東洋解け合って衝突しまた新しいものが出来るイスタンブール
黒人締め付けから黒人の解放が起こり結局黒人間の格差が生まれたヨハネスブルク
石油に変わる資源を作り出す事で国を発展させたサンパウロ
資源がないため世界中から良質な人材を集中させる政策を採るシンガポール
地下にその発展の矛先を向け始めた東京


どれもヒトの欲望が原動力となって都市が変化していく姿が描かれている。
このシリーズのテーマは「企業のネットが星を被い、電子や光が駆け巡っても国家や民族が消えてなくなるほど、情報化されていない近未来。」という攻殻機動隊にいたる世界の流れを見せたかったのだろう。そういった意味でシリーズ途中にアメリカ発の金融危機という経済の構造変化が起こった事はこのシリーズの価値を高めている。特にドバイ。分かりやすいほどの不動産バブル絶頂期に取材されたこの回は人間の肥大した欲望の行き着く所を見せてくれた。結局それは良い家と良い車と良い家電と良い衣服と良い食事であった。映画でどんなに愛を唱えても、物質的な豊かさをまず第一に求めるヒト。単純であり、そこらへんが結局真実なのだと突きつける。


アメリカの消費バブル崩壊後に何が起こるのか。すでに他のNHKスペシャルで派遣切りの実態というテーマで日本国内の場合は提示されているが、沸騰都市シリーズとしても3月にその後の沸騰都市として放送されるようだ。


ちなみにタイにおいて感じるのやはり車、家、ヒトの衣服の変化。この国でもこの国の個性に応じて発展と称するヒトの欲望の追求が起こっている。出来れば自分はそこから距離を置きたいと考えるが、そうもいかないのが人間の本質なのだろう。