コラート・コラートズーのすべて(2) 霊長類展示編


霊長類、平たくいうと猿ですね。モンキー。これらの展示って大体上方向に大きい檻の中に入れられているものかコンクリートなどで出来た猿山のように人工的な施設の中で集団飼育されている例が多いですよね。また近年の展示の流れの中にあったランドスケープイマージョンと呼ばれているような出来るだけ本物っぽい見た目の環境に似せる展示の例は霊長類展示に置いてはそれほど多くないでしょう。これには理由があって、動物園展示を設計する上ではずせない、観客にとっての快適、動物にとっての快適、そして飼育員にとっての快適という3つの要素をすべて兼ね備えられる猿展示が難しいという現状があるようです。私は他の多くの動物園を語る言葉よりもこれが一番重要な言葉の気がします。


さておき、そんな事を聞いていただけにここの猿展示にはホント驚かされました。まず大きな特徴として柵も檻も無い無柵式放養形式。しかも極力人工物を置かない努力をしつつもそれを徹底まではしない潔さ。そして動物までの距離がほとんど目の前、もしくは真上だったりする近さ。別にイベントの時間だからわざわざ綱渡りをするわけではなく、あくまで自主的に餌をとるために広大な木々の間を渡り飛ぶ猿。その実現には万が一猿が人に近寄って危害を加えたり餌を与えられる事をいとわない、タイのおおらかさというよりもこの面白さを味わうためには少々の無茶も許容してくれという心構えがあるように思いました。そういう意味でこの展示は完璧ではないのでしょうが、個人的にはこれほど面白く猿の生態を観察できた展示はいままでありませんでした。



生息地内の展示とも違う、動物園ならではのロープやら巣箱などの演出がより猿の行動や特徴をハッキリと示してくれてます。しかも子どもにも見やすいという。すべてがこの展示内で完結するので何も無い場合は飼育員の苦労も少ないのかもしれません。




このようにテナガザルが主な住人。区画は一応水で囲われた島になっていて猿達が隣の島に移れないようにはなっております。でも移ろうと思えば移れるくらいの距離感。勿論観察する場所も自由で猿が何かしている所でじっくり見られるような絶妙な順路配置になっています。



問題点もあって遠くにいる時や寝ている時は見つけられないということがあるかもしれません。でもね、ここの猿は終止活発に餌を探し、動き回っておりました。ここの環境を猿達は結構気に入っている、と、感じ取れる雰囲気がある、そんな展示となってます。動物園に行ったときに感じる人も多い、あの「もの悲しさ」を感じずに猿と一緒の気分で行動を楽しむ事が出来るという特徴は唯一無比のものがあるかもしれません。そのくらいここの猿達の表情や行動は豊かでした。


引き続きコラートズーをお届けしますが、予告として次回の動物園シリーズはドイツ・ハンブルグのハーゲンベック動物園を予定しております。今回の文中にも登場した無柵式放養形式を取り入れた最初の動物園の2009年版展示がどうなっているのか、みてこようと思います。お楽しみに。