他者の完全肯定!僕達急行 A列車で行こう


今年3月頃に公開された森田芳光監督「僕達急行 A列車で行こう」を
日本に帰るANA機内で観て、とても良かったのでさらにタイに戻る
復路で2回目観ました!というわけで少し書きます。


森田芳光監督というと「家族ゲーム」の印象がめちゃ強く、かなり
不思議な映画を撮る方だと思います。ただ近年では商業映画を多く
撮っているので、それほど気にしておりませんでしたが、題材が鉄
道趣味を中心とした映画でしたのでこれは観てみようと思い、観て
みるとこれが素晴らしいテーマ。


この映画のテーマは「趣味っていいね」「人間いろんな人がいて面
白い」「女性の気持ちは分からない」だと思います。


映画内には鉄道趣味以外にもたくさんの趣味を持った人が出てきま
す。ただ、それが「7人のおたく」で描かれるようなマニアではな
く、あくまで「少し好き」くらいの人が多く、さりげなく描かれて
いるのがとても好印象。きちんと仕事しながらも別に好きなものが
あるという世界観が現実的です。


そして鉄道趣味の中でも主人公二人の鉄道に対する想いはちょっと
違う。一人は鉄道に乗りながら風景を見つつそのときに合った音楽
を聴く事、もう一人は鉄道の設計や内装を楽しむ事。それぞれ少し
違うスタンスで鉄道に向き合いながらもお互いを認め合う。またあ
る人は鉄道模型が好き、またある人は鉄道の音が好き。理由を聞い
て最初は驚きつつも


「いろんな考え方があるものですね。それはそれで感心しました」


という。まさに人間いろんな人がいて面白いという金子みすゞ
「みんな違ってみんないい」的なテーマを一言で表していると思い
ます。


そして今の世界は仕事上での上下関係が主ですが、この映画では趣
味での繋がりはそれを楽々超えられる、そういう世界の方が面白い
でしょうと高次の世界観を提示していると思います。鉄道趣味にし
ても色々。鉄道以外の趣味でもそれはいえるでしょう。そこに趣味
の高低や差別はなく、それぞれが好きな事をすることへのエールが
送られてます。その点がとても共感でき、興味深かったです。


私も鉄道好きですが正直にいって一番好きなのは夜行列車に乗りな
がら個室の電気を消してエレクトロやアンビエントを聴く事(最近
なかなかできませんけど…)。なかなか同志はいないかと思います
が、それもありという事。


ただし、それでもやっぱり女性の気持ちは分からない…というのは
恋愛に対する監督の気持ちが表れててチャーミングです。


映画としては演出や演技が少し不思議なリズムですので、それに合
わない人は「?」という映画だと思いますが、ほとんどHAPPYな
感情だけで作られたこの映画に身をゆだねるのが心底心地いいと思
う人は結構多いと思います。私は同じ考え方だったので、とても楽
しい気分で観ることが出来ました。


問題はこの映画を観ると鉄道に乗りたくてたまらなくなることでし
ょうね。