モテキ 映画版 好き、大好き、特別に好き!



この前の日本滞在65時間の中でとにかくこの映画を今の日本の映画館で観たかったので『モテキ』へ。


連載時に人に薦めまくった人として、漫画→ドラマ→映画とすごい勢いで世の中を巻き込んでいく『モテキ』の集大成としての『映画』という位置づけで、もちろん期待度MAXで行ってきました。


結果、


大成功!!!傑作じゃないですか。これ。


いや、傑作、というか俺は好きだ!という映画でした。
久々に『いい映画だな〜』じゃなくて、『この映画好き』だよという映画だった。映画として色々言われてるのは超わかる。特にエンディング。
でもね、それはどうでもいいんだ。ハラカミさんとフジファブリックPerfume麻生久美子さんが出ているだけで十分だよ。ももクロも出てるし、瀧も出てる、そういう好きな奴ら大集合感だけでも十分オッケーなんだけど、それ以上に好きな所がたくさんあるんです。そもそもコピーの『恋が攻めてきたッ』ってのが小松崎茂先生の『イルカが攻めてきたぞ』っぽくてすでにそういうところでも好き。少なくともあのエンドロール見たらこの映画が特別だって事分かるよ。あんな気持ちいいサービス精神、普通の映画にゃないもんね。


あまりグダグダ言いたくないけど、すでにタイに戻って周りに観た人も居ないので、ここにきちんと書いておこう。ここが好きなんですと。ネタばれしますよ。ほんのちょっと。少し。わりと。


・さて
初めて観る人にとっては『モテキ』という題名だけ聞いたら、主人公が『あること』がきっかけで突然もてだして、何人もの女性とめくるめく甘い体験をした後に真実の恋を見つけるみたいなどーでもいい映画と思ってしまうと思いますが、それは全然違います。


・漫画 モテキについて
この漫画、久保ミツロウさんという男性名だけど、女性が描いています。これは本当に重要で女性の視点で男性の気持ちが描かれているのが新鮮。それに加えて女性ならではの表情には出さないけど内面はこう思っているという感情の爆発が今まで読んだことのないもので、女性はそこに共感出来て、男性は驚愕するという構造になっていて、超面白い。そしてとにかく女性キャラがビジュアル的にエロかわいい。でも知り合いにどこかかぶっていそうな性格を持っているリアルなキャラ。その2点でやっぱり革新的な漫画だったと思う。


脱線しますが、久保さんについては、『トッキュー!!』という海上保安庁特殊救難隊の漫画で女性なのにメカがきちんとかっこ良く描けてて、完全にこいつただもんじゃねえ、むしろ両性具有じゃねえか?と思うほど感心したんです。しかもストーリーは万人受けするエンターテイメントとしても抜群の出来で、キャラクターもわかりやすく嫌味なく自然で正直この人天才だと思っている。しかも元々メカがうまくかけたわけではなく、いろんな面でしっかり取材して、すごい努力して手抜きなくすべてのレベルを上げた感じ。そういう姿勢にいつも感服します。


そもそも女性漫画家で飛行機をちゃんと描いてる人いないから!一条ゆかり先生もホント飛行機だけはダメだから!しかも久保さん佐世保出身でうちの元上司と同じ高校、同じ学年、、ま、それはどうでもいいんだけどさ。


脱線終了。


・ドラマ モテキについて
で、ドラマ版が深夜ドラマとして始まります。大根監督という非常にサービス精神の旺盛な監督によってごちゃごちゃMIXされたようなドラマ版はキャストがバッチリはまってて、これまたいい出来なんです。特に満島ひかりのいつかちゃんはうまいし、心揺さぶられるよね。そして漫画では一話ごとに曲名がつけられていてそれがテーマになってくるんだけど、ドラマではその設定を見事に生かして音楽が聞こえるっていうのがスゲーーイイ!そもそも放送したらすぐにDVDが作られる時代に権利関係でごちゃごちゃしてややこしい音楽をバンバン使うっていう潔さと覚悟、コレにビビった。


しかもOPがフジファブリックの新曲ですよ。Vo.志村死んじゃったのに。これは嬉しかったなあ。しかも曲とドラマの内容が合いすぎでコレまた奇跡でしたね。女性キャラはきちんとエロくてコレも原作の雰囲気ばっちり出していたと思います。


・そして映画 モテキ
てな感じで漫画、ドラマ共に素晴らしかったんですが、映画、コレ一番好きでした。これには糸井重里さんに完全同意。
大きな理由は言わずもがな、最高の長澤まさみですよ。長澤まさみってキャリアの頂点がほぼデビューの『世界の中心で愛をさけぶ』ということは間違いないでしょう?まさかラフだったりタッチだったり涙そうそうだったりセーラー服と機関銃だったりするわきゃねえ。この『世界の中心で愛をさけぶ』でみせた超健康的なシルエットがもう一度見たい!しかも大人になったバージョンで!もう東宝の看板女優ってことからくる制約で、『純情』とか『漫画原作』の感動してくれ系の映画にゃこっちは飽き飽きしてるんだよ!!というほぼ大多数の男子の欲求、欲望に対して忠実に映像化してくれてます。


その結果、史上最高の長澤まさみになってます。もうこれだけでね、相当偉いと思うんです。間違いなくこれからの長澤まさみに注目するし、『世界の中心』以降、代表作といえるものがない彼女にとっても本当に転機なるような映画になったはず。


・女性キャラ
とにかくこの長澤まさみ=美由紀がいいんです。手足が長く、ぐっとくるショットが多数。本当に美味いこと撮ってくれたと思います。
そこがエロい。東宝の看板、シンデレラとして、長澤まさみ=エロいというのはタブーだったと思うんだけど、頭がおかしい素晴らしいキスシーンや、きちんと巨乳であることを強調していて、時代の変わり目を目の当たりにしたと感じました。


美由紀の性格も漫画の土井亜紀の社会性、夏樹のビッチ感、いつかちゃんのサブカルトークもいけますをまとめた最強の女性になっててここがまず第一に良かった。主人公を気にする理由付けも完璧すぎる金子ノブアキよりも自分に近い存在のほうが…ということでまあOK!(かなりファンタジーだけど…)。最後にちゃんと自分の内面をさらけ出してくれるのもハッキリしていいと思う。


そして麻生久美子さん=るみ子。これが良かった。とにかくよかった。良かったというか、切ないんですよね。とっても。
きちんとキャラクター作りしてあって、ジュディマリは知ってて今のYUKIを知らない、でB'z好き(+ディズニー好き)というまわりにいそうなキャラなんだけど、この作品の中では逆にメインストリームじゃないキャラ。そんなキャラだけど「好き、大好き!特別に好き!」ってせりふを言うのが麻生久美子さん!なので超可愛いんだ。久保さん、ありがとう。あれを聞いたばっかりに今でもふと色々と思いだしてしまいます。


けどカラオケシーンでは一人でB'zや竹内まりあを歌ってて、実際、麻生久美子さんじゃないバージョンでいたら重いんでしょうねえ。実際知り合いにもいるもんな。こういう人。でもこの境遇に素直に共感してミニカーの仕事を褒めるだけで麻生さんに惚れられる主人公。素直に超腹立つ!(ま、でもるみ子にとって丁度良かったんでしょうねえ。主人公くらいが。)


B'z好きとももクロ好きの二人は当然うまくいかない。で、最後には麻生さんゾンビ化して最高に面白いんだけど切ないセリフを言う。俺はあのセリフ面白いけど笑えなかったな〜正直切なくて泣きそうだった。


決定稿前では主人公と映画を見て主人公は全く笑ってないのに大笑いしているシーンとかあったみたいでさらにキツイ。でもわかりますよね。こういう人居ますから。ちょっと大きな視点で見れば決して重くはないのに、その前のシーンで『女性と男性で決定的に違う恋愛条件がある。それは女性には妊娠できるリミットがあるから待てない』という仲里依紗のセリフの後に出るもんだからホント、辛い!切ない!なんで優しさ見せられないの?B'zとももクロくらい乗り越えろよ!ふざけんな主人公ぶっとばす!って気になります。いまだに腹たってます。ここまで感情を揺さぶられるだけでも凄いよ。そんな色々考えさせられるキャラを麻生さんが死ぬほど可愛く演ってくれるので君に届けのような精度の高いキュンキュンが来るんです。悲しいなあ、悔しいなあと。


ちなみに元々の台本ではもっといやーな感じなんです。ビレヴァンに行って進撃の巨人をお勧めして買わせたり、主人公にるみ子が分からないようなセリフを言わせてきょとんとさせたりディズニー好きだったり。そのへんをカットしてあるから傷が浅いけど、完全版的なDVDではおそらく撮ってあるので入れてくるでしょう。そうしたらもっときついな。主人公の自分の内輪じゃないと駄目だ感は見ていて自己嫌悪に陥る人いると思います。


で、仲里依紗真木よう子については出番も少ないんですけど、きちんとしたいい仕事してます。特に仲里依紗さんの『妊娠リミットがあるから待てない』って女性はよくわかっているんだと思いますけど、きちんと言わせたところにこの映画の監督の肝の座り方が見て取れますよね。あのセリフ、前々から俺はわかってない男(+若い女子!)に言いたかったので、嬉しかった!スカッとした!


真木よう子さんは台本62番のシーンに『自身の身体的特徴を言い放つ圧倒的かつ素晴らしいセリフ』があるんですけど、全部カットになっていたので返す返すも残念。あそこはDVDでの復活を望みます。


あと付け足すようだけど金子ノブアキの男っぷりも良かった。普通の男では絶対太刀打ち出来ない感じが出ててくそ〜〜って思いますよ。あれはかなわん!


・音楽
これはrei harakamiが流れてきた時点で号泣ですよ(その時の長澤まさみの体育座りがまたいい・・・)。監督ありがとうな。しかも出演までしてるんだもん。ほんと、ありがとう監督!もちろん最初のフジファブリックでも号泣です。Perfumeのダンスの所では、あーモテキも大きいところまで来たなあとそこでもホロッと。これ原作者だったら死ぬほど嬉しいだろうなあという視点でもたくさん泣きそうになりました。瀧も出てたしね。くるりもね、あの東京だもん、間違いないよ。


Twitterを中心とした先端的な文化
これ、ホント今の映画。今の日本のツイッターの世界がここにある。なので5年後見たら陳腐化している危惧ありますのでいま見に行ったほうがいいです。部屋でふて寝してたときのつぶやきを長澤まさみに訊ねられる所とかとても自然でうまい使い方だったなあ。長澤まさみが主人公と麻生さんの二人のツイート見比べて一緒にいること推測したり。あれ使っている人じゃねーっとあの演出出来ねーです。


そして、これ思ったんですけど、主要登場人物はみんなiPhone4なんです。だけど、るみ子だけ、iPhoneじゃないんです。ものすっごくカチカチカチカチやってツイッターやっているシーンがあるんですよ。当然意図的でしょうけど、これにはうわーーーーーーすげえ!って思いました。この差、この感じ、るみ子というキャラの立ち位置うまく表してて上手すぎるなあと。あざといけど完璧です。監督。


・なぜおすすめするのか
考えてみれば主人公はPCも普通のノートPC(ナタリーではMac)だしデートも結構オシャレなとこ行くんですよ。これって『電車男』とは全く違う土台なんですね。サブカル好きであってアニメオタクではないしPCマニアでもない。だからより一般的に感情移入しやすいのかな。
漫画、芸人、音楽あたりを中心にしたサブカル好きというのは特殊ではなく普通だから、一つくらいは自分とかぶる所があるのかなあと。つまりこの映画の中の『もてない男』というのが『電車男』より全然一般的なんですね。女性ともまあ普通に話せるし社会性が少し無いだけでわりと自分に近いと感じる人が多いはず。だから違和感がなくスッと入ってくるのかなと。


・問題
もちろんいろんな問題点もあるけど、全然問題ないです。少なくともこれを問題としてしまったら今後こういう映画は作られないでしょう。そんなもったいないこというなら問題にしないほうがいいよ。とにかく勢いを感じる映画だし、仕事がきっちりしてて見ていて気持ちいいんです。


・とにかく
この映画は今の日本文化のリアルな使用方法をパキッと掬いとってくれているしそれがとても丁寧で上品に映像化している。でも話しとしては恋愛なのでわかりやすい。演出のサービスが過剰で楽しい。色々とイイところがあります。


でもそれ以上にこの映画についていろんな人がいろんな感想をいえる引き出しがあると思うんです。自分もそういう話してみたいし、相手を知る上でもこの映画の主人公や女性に対してどう思ったかというのはとっても面白い話のネタだと思うんですよね。嫌いだという人はいても『俺この映画興味ないんで』という人は少ないと思う。特に10代、20代は。


なので多くの人に見てもらっていろんな人とこの映画の話をしてみたい!今はそんなふうに思ってます。